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天文学や宇宙物理学の話題をくわしく解説します。

【イラストでわかる】クェーサーとは何か

クェーサーP172+18 credit: ESO/M. Kornmesser 

みなさんはクェーサーを知っていますか?クェーサーはとても明るい天体として知られています。この記事では、クェーサーとは何かを解説していきたいと思います。

 

 

 

謎の天体クェーサー

クェーサーは、非常に遠くにあり、宇宙で一番明るい天体です。地球から見ると、普通の星のように点状に見えます。

クェーサーの特徴

具体的に言うと、明るさは通常の銀河の100倍になります。距離は、約20億光年~130億光年程となります。

 

これらの特徴から、大量のエネルギーが、小さな領域から放出されているということが言えます。この異常に明るい天体の正体は、一体何なのでしょうか。

最も遠いクェーサーULAS J1120+0641(写真中央の赤い点)ビッグバンから770万年後に存在 credit: ESO/UKIDSS/SDSS

 

 

クェーサーの正体

クェーサーの正体は、異常に明るい銀河中心核です。つまり、クェーサーは1つの星ではなく、銀河の中心部分です。しかも、通常の銀河中心核よりも段違いに明るいのが特徴です。

クェーサーの正体

クェーサーが段違いに明るい理由は、太陽の質量の10万~100億倍という巨大なブラックホールが原因と考えられています。

 

ブラックホールは、光すら脱出できない天体であるため、それ自身はエネルギーを放出しません。しかし、ブラックホールの周囲では、降着円盤と呼ばれる超高温のガスが渦巻いており、大量のエネルギーが放出されます。巨大ブラックホールの近くからは、ジェットが噴き出るものもあります。

 

1年間にブラックホール降着円盤に吸い込まれるガスは、太陽の質量の数倍にもなります。

 

 

クェーサー活動銀河核の一種

クェーサーのように、異常に明るい銀河中心核を活動銀河中心核といいます。英語ではActive Galactic Nucleiといいます。また、これを略してAGNといいます。

活動銀河核の特徴としては、次の4つが挙げられます。

①異常に明るい

➁銀河に比べてサイズが小さい

③数日から数年の周期で明るさが変わる

④ジェットを出すものもある。

 

もちろんクェーサーも、この特徴に当てはまります。

 

 

活動銀河核の種類

活動銀河核には、いろいろな種類があります。これらは、クェーサーの仲間と考えてよいでしょう。

活動銀河核の種類

セイファート銀河

セイファート銀河は、普通の活動銀河核です。活動銀河核の中では比較的暗く、私たちの銀河系の近くにあります。私たちの銀河系の近くで見つかる銀河の10%はセイファート銀河です。より明るい天体であるクェーサーとは、数値によって区別されています。具体的には、絶対光度-23等級より暗ければセイファート銀河、明るければクェーサーです。しかしながら、この分け方が絶対というわけでもありません。セイファート銀河はそれほど明るくないので、遠方では見つけにくいです。

LINER

LINER(ライナー)とは、低い電離度のイオン(N+やS+)や中性原子(O0)からの強い輝線をだす活動銀河核です。輝線とは、物質がだす光で、物質の種類によって光の波長が違います。例えば、水素原子がだすHα線の波長は656.3nmです。LINERは、発する輝線に特徴がある銀河核といえます。

クェーサー

クェーサーは、活動銀河核の中でも最も明るいものです。明るさは、絶対光度が-23等級より明るいものとされています。クェーサーは非常に明るいので、遠方にあっても発見することができます。この性質のため、初期宇宙の様子を調べるために使われたりもします。

電波銀河

電波銀河は、活動銀河核の内、強い電波を発するものです。ただし、とても明るい電波銀河はクェーサーと呼ばれます。また、電波の弱いクェーサーと区別するために、電波の強い銀河と呼ばれたりもします。

ブレーザー

ブレーザーは、ジェットの方向が、私たちの方を向いている銀河です。このため、ジェットを真正面から見るときと、少しずれたところで見るときが出てきます。ジェットは、進行方向に強い光を発するので、真正面で見たときと、少しずれたところで見るときでは、明るさが激しく変化します。

 

 

まとめ

クェーサーについて次のことが言えます。

①宇宙一明るい天体

➁銀河の中心部分

③巨大ブラックホール降着円盤がとてつもない明るさを生み出す。

 

いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。