【イラストでわかる】ブラックホールと事象の地平面
みなさんはブラックホールをご存じですか?ブラックホールは、なんでも吸い込む穴として有名ですね。この記事では、ブラックホールがどのようなものであるのかを解説します。
ブラックホールの特徴
ブラックホールとは、一言でいえば、
です。ブラックホールがなんでも吸い込むのは、非常に重力が強いからです。このため、宇宙で一番早い光さえ吸い込まれてしまいます。
ブラックホールは、一旦中に入ると外にでてこれません。そのため、ブラックホールの中のことは何もわかりません。ブラックホールについても分かることは限られていて、質量、角運動量、電荷の3つしか持たないといわれています。これをノーヘア定理といいます。髪の毛がないという意味です。
ただし、ブラックホールの外側については、観測が可能です。そのため、ブラックホールの外側を研究することで、ブラックホール自体のことを知ろうという動きがあります。
事象の地平面
ブラックホールは、吸い込まれると二度と出てこれなくなるといいましたが、それならばどこまでなら近づけるでしょうか。その答えは、事象の地平面の外側までです。事象の地平面とは、それより内側に入ると二度と出てこれなくなる境界のことです。この事象の地平面がブラックホールの表面です。
事象の地平面は、シュバルツシルト半径に一致します。シュバルツシルト半径は、ブラックホールの半径です。星の質量M、万有引力定数G、光速度cを用いると、シュバルツシルト半径は次のようになります。\[ R_s = -\frac{2GM}{c^{2}} \tag{1} \]したがって、シュバルツシルト半径は、星の質量が大きいほど大きくなることが分かります。
事象の地平面における時空の歪み
重力が存在する場所では、時間と空間がゆがみます。それでは、この歪みによって、何が起こるでしょうか。
時間の遅れ
重力は時空を歪めます。すなわち、時間と空間が、重力がない場合に比べて遅くなったり、縮んだりします。
具体的な式
ブラックホールの中心から距離rの位置にいる人の時間Δt*と十分遠くにいる人の時間Δt∞には、\[ Δt_∞=\frac{1}{\sqrt{1-\frac{R_s}{r}}}Δt_* \tag{4}\]という関係があります。ここでRsはシュバルツシルト半径です。この式に、r=Rsを代入してみましょう。(4)式は、次のようになります。\[ Δt_∞=\frac{1}{\sqrt{1-1}}Δt_* =∞×Δt_* \tag{5}\]この式から、事象の地表面にいる人の時間は、十分遠くにいる人の時間に比べて無限に遅くなることが分かります。遠くから見ると、事象の地表面では何をやるにも無限の時間がかかるので、そこにいる人は止まって見えます。
光の波長の変化
時空の歪みによって、光の波長も影響を受けます。これを重力赤方偏移といいます。
具体的な式
遠くまで届いたときの振動数を、波長をとすると\[ v_∞= \sqrt{1-\frac{R_s}{r}}v_*、λ_∞=\frac{1}{\sqrt{1-\frac{R_s}{r}}}λ_* \tag{6}\]という関係になります。この式に、r=Rsを代入してみましょう。(6)式は、次のようになります。\[ v_∞= \sqrt{1-1}v_*=0×v_*、λ_∞=\frac{1}{\sqrt{1-1}}λ_*=∞×λ_* \tag{7}\]このことから、シュバルツシルト半径の位置から発せられた光は、遠くから見ると、振動数が0、波長が無限大となります。このような光は見ることができないので、ブラックホールから発せられた光は見ることができません。
重力赤方偏移の導出をしたい方は下の記事がおすすめです。
シュバルツシルト解
シュバルツシルト解
ブラックホールを表現する式として、シュバルツシルト解があります。これは、一般相対性論から導かれる式です。シュバルツシルト解は 次のようになります。\[ ds^{2} = -\begin{pmatrix}1-\frac{2GM}{c^{2}r}\end{pmatrix}d\begin{pmatrix}ct\end{pmatrix}^{2}+\frac{dr^{2}}{\begin{pmatrix}1-\frac{2GM}{c^{2}r}\end{pmatrix}}+r^{2}\begin{pmatrix}dθ^{2}+sin^{2}θdφ^{2}\end{pmatrix} \tag{2} \]この式の左辺のds2は、線素の2乗といいます。相対性理論では、この線素の2乗を使っていろいろな時空の形を表すことができます。
シュバルツシルト半径
この式で、r=Rsのときを考えてみましょう。すると上の式は次のようになりますね。\[ ds^{2} = -\begin{pmatrix}1-1\end{pmatrix}d\begin{pmatrix}ct\end{pmatrix}^{2}+\frac{d\begin{pmatrix}\frac{2GM}{c^{2}}\end{pmatrix}^{2}}{\begin{pmatrix}1-1\end{pmatrix}}+\begin{pmatrix}\frac{2GM}{c^{2}}\end{pmatrix}^{2}\begin{pmatrix}dθ^{2}+sin^{2}θdφ^{2}\end{pmatrix} \tag{3} \]この式は、右辺第2項において、0で割ることになってしまい、上手く計算できません。つまり、シュバルツシルト解の値がおかしくなるところがシュバルツシルト半径であるといえます。
ブラックホールの種類
先ほどのシュバルツシルト解は、静止したブラックホールを表したものです。この他にも、自転するかどうか、電荷を持つかを考えることで、シュバルツシルト解とあわせて4種類のブラックホールを考えることができます。
シュバルツシルトブラックホール
シュバルツシルトブラックホールは、自転せず、電荷も持たない最も単純なブラックホールです。このブラックホールは、球対称です。
カーブラックホール
地球や太陽のように自転しているブラックホールをカーブラックホールといいます。自転をしていることを、角運動量を持つといいます。かーブラックホールは、自転による遠心力のため、横につぶれた軸対称の形になっています。
ライスナー=ノルドシュトルムブラックホール
自転をしない、すなわち角運動量を持たないが、電荷を持つブラックホールをライスナー=ノルドシュトルムブラックホールといいます。
カー=ニューマンブラックホール
自転をしている、すなわち角運動量をもち、さらに電荷も持っているブラックホールをカー=ニューマンブラックホールといいます。
最後に
シュバルツシルト解について式の導出もしてみたい方は、以下の記事がおすすめです。
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。