【イラストでわかる】ブラックホール降着円盤
みなさんはブラックホールの降着円盤という言葉を聞いたことがありますか?ブラックホールは、入ったら二度と出てこれない穴として有名ですが、その周囲には大量のガスが渦巻いています。この記事では、ブラックホールを取り巻く降着円盤について解説します。
ブラックホール降着円盤
ブラックホール降着円盤(こうちゃくえんばん)とは、ブラックホールのまわりに存在するガスでできた円盤のことです。
なぜできるのか?
ブラックホールの周囲にガスが存在していると、そのガスはブラックホールに引き寄せられて落ちてきます。このとき、ガスはまっすぐ落ちてくるのではなくて、ブラックホールの周りを回りながら落ちてくる場合がほとんどです。みなさんも、お風呂や洗面所にためた水を抜くと、水がくるくる回りながら吸い込まれていくのを見たことがあると思いますが、それと同じ原理です。この回転しながら落ちていくガスが大量にあることで、ブラックホールの周りに円盤を作ります。これがブラックホール降着円盤です。
ガスが回転しないときもあるのでは?
ガスが回転せずに落ちていくときもあります。この場合は、ブラックホール降着流(こうちゃくりゅう)と呼ばれることもあります。
降着円盤は光る
回転速度の違いが摩擦を作り出す
降着円盤の回転速度は、内側ほど速くなります。これは、内側の方がブラックホールに近く、重力が大きくなるからです。このことから、ブラックホールの外側と内側では回転速度に差が生じることになります。すると、外側と内側のガスの間に摩擦が生じます。
摩擦が光を作り出す
摩擦があると、摩擦熱が発生します。みなさんも手のひらを激しくこすり合わせてみてください。手のひらが熱くなると思います。降着円盤で発生した摩擦熱は、その一部が光に変わります。
エネルギーの流れ
降着円盤から光が発せられるしくみは、エネルギーの流れという観点から見ることができます。まず、ブラックホールの周囲のガスは、重力によって運動し始めます。運動する物体は、運動エネルギーを持っています。ここで、重力エネルギーが運動エネルギーに変わったといえます。運動するガスは、途中で摩擦により運動エネルギーの一部を失い、減速します。このとき、失った分のエネルギーは熱エネルギーに変わります。更にそれが光エネルギーに変わることになります。
ブラックホールが速く自転するほど光が強い
降着円盤から放出される光は、ブラックホール自身が速く回転するほど多くなると考えられています。自転しないシュバルツシルト・ブラックホールでは、質量エネルギーの10%が放出されますが、高速で自転するカー・ブラックホールは、質量エネルギーの40%を放出します。この40%というのは、宇宙でも一番のエネルギー変換効率を誇ります。
降着円盤の種類
降着円盤には、大きく分けて3つの種類があります。これらは、質量降着率の違いによって区別されます。ここで質量降着率とは、ある決まった時間の中で、ブラックホールに吸い込まれる質量はどれくらいかということです。大雑把には、降着円盤にどのくらい質量が取り込まれるかということです。
標準円盤
標準円盤は、その名のとおり標準的な降着円盤のモデルです。標準円盤は、重力エネルギーから光エネルギーへの変換効率が最もよいです。先ほどの10%や40%というのは、標準円盤での値になります。光エネルギーの放出により、円盤内部のエネルギーは減るので、円盤は薄くなります。また、温度も低くなります。
ライアフ
標準円盤より質量降着率が低いとライアフになります。放射非効率降着流(ほうしゃひこうりつこうちゃくりゅう)とも言います。円盤内へ入ってくる質量が少ないため、円盤のガス密度は下がります。また、放射するエネルギーも少ないため、円盤は厚くなります。
スリム円盤
標準円盤より質量降着率が高いとスリム円盤になります。スリム円盤は、大量の質量が供給されるため、円盤のガス密度が高くなります。そのため、降着円盤内のガスにぶつかり、光子が逃げられないままブラックホールへ落ちていくという事態が発生します。これを、光子捕獲(こうしほかく)といいます。
まとめ
最後に、降着円盤の特徴についてまとめておきます。
ブラックホールそのものについて知りたい方は以下の記事をお読みください。
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。