Astro room

天文学や宇宙物理学の話題をくわしく解説します。

【写真でわかる】太陽の構造

太陽(10種類の波長の違う波長を組み合わせたもの) credit: NASA/SDO, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

太陽は、みなさんにとってもっとも馴染の深い天体ではないでしょうか?それだけでなく、沢山の光を地球に供給するなど、私たちの生活に欠かせない重要な存在でもあります。今回は、そんな太陽について解説していきたいと思います。

 

 

太陽とは

太陽は、電離したガス(プラズマ)の塊です。また、地球に最も近い恒星でもあります。

直径 140万km(地球の109倍)

質量 2×1030 kg(地球の30万倍)

光度 3.8×1026 ワット

表面温度 6000K

太陽と地球の比較

 

 

太陽はどうやって光るのか

実は、太陽に限らず、全ての物体はその温度に応じて光を発しています。これを、黒体放射といいます。黒体放射は、温度が高ければ高いほど短い波長の電磁波を出すようになります。そして、太陽のように目に見える光(可視光)を発するには、1000K程度の温度でなければいけません。私たちも温度に応じて電磁波を発していますが、体温は約36℃(約300K)であるので、目に見える光を発することができません。

 

黒体放射についてもっと知りたい方は、こちらのサイトがおすすめです。

solarphys.com

太陽の温度源

太陽の光は、6000Kという高温な太陽表面から発せられますが、太陽はなぜこんなにも高温なのでしょうか。それは、太陽内部で、核融合反応が起こっているからです。太陽だけでなく、恒星はすべて、核融合反応によって輝いています。

 

 

太陽はどうやって形を保つか

物体には重力がはたらくので、放っておいたらどんどん収縮していきます。太陽も、自身の重力により、常に内側に収縮しようする力がはたらいています。この収縮を止めているのが、ガスによる圧力です。空気でパンパンになったタイヤを押しつぶそうとしてもつぶれないのと原理は一緒です。

重力とガスの圧力のつり合い

風船をつぶすと、中の空気に押し返される

 

 

太陽の内部

太陽内部は、中心からコア、放射層、対流層となっています。コアの温度は1000万Kを超え、水素原子核がヘリウム原子核に変わる核融合反応が起きています。ここで作られたエネルギーは放射層→対流層→太陽表面へと運ばれていきます。

太陽の内部

太陽の中心温度は、1400万Kに達しており、核融合反応が起こっています。中心部で生じたエネルギーは、太陽の放射層を数万~数十万年かけて通過します。対流層まで運ばれたエネルギーは数か月程度で対流層を通過し、太陽表面へ到達します。

 

 

太陽大気の構造

太陽大気は内側から順に、光球、彩層、コロナという名前がついています。

太陽表面

太陽の表面:光球

太陽はガスの塊なので、太陽と外部とを区別するはっきりとした境目はありません。そこで、太陽を可視光で観測したときに見える光の球を、太陽の表面としています。この太陽の表面を光球といいます。光球の表面温度は6000Kです。

光球(可視光) credit: NASA/GSFC/Solar Dynamics Observatory

太陽の表面には、黒点、白斑、粒状班といった模様があります。黒点は、周囲よりも暗い場所で、下の写真の黒い斑点です。温度も周囲より低く、4000K程度です。また、周囲より磁場が強いです。黒点が周囲より冷たいのは、周囲より磁場が強く、太陽内部からの熱輸送が妨げられるからだと考えられています。黒点の数は、太陽の活動と共に増えたり減ったりします。この数の増減には周期性があり、11年周期で数が増えたり減ったりを繰り返しています。

黒点   cedit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA.

白斑は、黒点の周囲にできる明るい模様です。白斑も、黒点ほどではないですが、磁場があります。粒状班は、太陽表面のつぶつぶです。これは、太陽内部の対流が表面で沸き立っているものです。ちょうど沸騰した鍋の中の水の、沸き立つ泡のようなものです。

彩層

光球の外側には、温度が数千から一万Kの彩層と呼ばれる大気層があります。彩層を観察するには、太陽からのHα線をとらえる必要があります。

 

Hα線で見たとき、周囲より明るく白くなっている場所があります。これはプラージュといって、活発に活動する領域です。また、彩層ではフレアと呼ばれる大爆発も起こっています。これは、太陽表面の活動の中で最大規模を誇ります。

彩層で起こったフレア credit: 国立天文台三鷹キャンパス

下の写真の巨大な筋のようなものは、プロミネンスです。プロミネンスは、太陽の縁では明るく見えますが、中央付近では、太陽表面より暗いため、黒い筋として見えます。これを、ダークフィラメントといいます。

プロミネンス credit: 国立天文台三鷹キャンパス

ダークフィラメント credit: 国立天文台三鷹キャンパス

コロナ

彩層の外にはコロナがあります。コロナの温度は100万Kもあります。コロナがなぜこんなにも熱いのかはわかっていません。これをコロナ加熱問題といいます。コロナの様子は、X線皆既日食中に見ることができます。

コロナ cerdit: ESO/P. Horálek

太陽フレアとコロナ質量放出

太陽フレアが起こると、コロナの物質が外に放出されます。これを、コロナ質量放出、あるいはCMEと呼びます。コロナ質量放出が地球へ到達すると、地球磁気圏のバランスが崩れることがあります。これを磁気嵐と呼びます。磁気嵐が起こると、発電所や変電所の電気機器が壊れて停電が起こることがあります。また、CMEにより人工衛星が壊れることもあります。

 

 

太陽を見る眼

ここまで、太陽の構造を扱ってきました。それでは、これらの構造はどのようにして解明されるのでしょうか。実は、太陽の構造を知るには、太陽から発せられる電磁波を観測します。さらに、観測する電磁波の波長の違いによって、知ることができる構造が変わります

可視光→光球(黒点、白斑、粒状班)

Hα線→彩層(プラージュ、フレア、プロミネンス)

X線→コロナ

 

 

まとめ

この記事の内容を復習できる問題を用意しました。

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こちらのサイトでは、太陽の画像や動画を閲覧することができます。

solarwww.mtk.nao.ac.jp

いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。