【イラストでわかる】ロケットが飛ぶしくみ
宇宙ロケットは宇宙に物や人を運ぶためのものです。ロケットという名前を知っている人は多いと思いますが、ロケットがどのようなしくみで動くのかを知っている人は少ないと思います。この記事では、ロケットがどのように動くのかを分かりやすく解説します。
ロケットが飛ぶしくみ
地球から飛び出して宇宙へ行くにはどうすればよいでしょうか。答えは簡単で、ものすごい速さで飛び上がればよいのです。ものすごい速さとは、具体的には秒速7.9km以上の速度です。それではロケットはどのようにしてものすごい速さを獲得しているのでしょうか。
運動量保存則
宇宙ロケットの原理をくわしく知るためには、運動量保存則の理解が欠かせません。運動量保存則とは、外部から力が加わらないかぎり、物体系の運動量の和はどんなことがあっても保存するという法則です。
ここで、運動量や、物体系という聞きなれない言葉が出てきたので説明します。
運動量
運動量とは、ある物体の質量m1と速度v1をかけたもの、すなわちm1×v1です。これは、運動する物体がもつ運動の激しさや勢いを数値的にあらわします。といってもこれだけでは分かりにくいと思うので、具体的に考えてみましょう。
例えばボールで考えると、速度の速いボールは当たると痛いですよね?また、ボールが重ければ重いほど、当たった時の衝撃は増すと思います。このように、運動量は、体にあたったときの衝撃に相当します。
物体系
物体系とは、注目している物体のグループのことです。例えば、2つのボールAとBの運動を考えるときは、2つのボールが物体系となります。この2つのボールが互いに及ぼしあう力を内力といいます。また、この2つのボールが及ぼす力以外の力を外力といいます。
この物体系内では、ボールが互いにぶつかることがあります。2つのボール同士がぶつかると、それぞれのボールの速度は変化します。例えば、止まっていたボールが背後から追突されて動きだしたり、動いていたボールが正面のボールにぶつかって止まったりします。
以上のことを踏まえると、運動量保存則とは、考えている系内の物体の運動の勢い(運動量)の和は、系内の物体の衝突の前後で変わらない。ということがいえます。
これを式で表すと、物体Aの質量をm1、衝突前の速度をv1、衝突後の速度をu1、物体Bの質量をm2、衝突前の速度をv2、衝突後の速度をu2として、
m1×v1+m2×v2=m1×u1+m2×u2
となります。
ロケットにおける運動量保存則
それではロケットにおける運動量保存則をみていきましょう。ロケットは、燃料と酸素を積んでおり、内部で燃料を燃やしてガスを発生させます。このガスをロケット後方のノズルと呼ばれる部分から噴出することで、ノズルの方向と反対方向にロケットが飛んでいきます。
ここで、考える物体系は燃料と酸素を積んだロケットになります。燃料と酸素は、最終的にガスになるので、ここではロケットを、ロケット内部にガスが入っているとして考えてみましょう。
ロケット機体の質量を2kg、ガスの重さを8kgとしましょう。するとロケット全体の重さは10kgとなります。はじめ、ロケットは静止していたとします。このうち、ガス2kgを秒速10mでノズルから下方に放出したとします。するとロケットの速度はいくつになるでしょうか。ここでは、ロケットに外部から力が加わっていないとして考えてみましょう。
ロケットに外部から力が加わっていないため、運動量保存則を適用することができます。ここでは、ロケットがガスを放出する前と後で考えてみましょう。物体の一部分が切り離される場合も、2つの物体の衝突と同じように考えることができます。
まず、ガスを放出する前は、ガスを積んだロケットが一つあるだけです。これの質量が10kg、速度が秒速0mなので、ロケット全体の運動量は
10kg×0m/s
となります。
次にガスを放出した後は、8kgのロケットと2kgのガスに分かれます。ここで、ガスはノズルから下方に放出されるので、速度はマイナスとしましょう。すると、反対方向の上方がプラスの速度になります。(ちなみに速度のプラスマイナスは、方向の違いを表します)そしてロケットの速度はわからないので秒速?mとしましょう。ガスの速度は秒速-10mなので、系全体の運動量は、
8kg×?m/s-2kg×10m/s
となります。
最後に、ガス放出前とガス放出後の運動量が等しいので、
10kg×0m/s=8kg×?m/s-2kg×10m/s
8kg×?m/s=10kg×0m/s+2kg×10m/s
8kg×?m/s=2kg×10m/s
?m/s=2.5m/s
ここでついに、?m/s、つまり、ガス放出後のロケットの速度が2.5m/sであることが分かりました。実際には、ガス2kgが一度に出ていくわけではないですが、ガス2kgがすべて秒速10mで出ていけば、残ったロケットの速度は秒速2.5mとなっています。
このように、ロケットは、ガスが下方に放出される勢いの反動を用いて飛んでいます。このロケットを飛ばす力を推力といいます。この力は、ガスの勢いが大きくなればなるほど、速く飛ぶことができます。気になる方は、ガスの速度や出す量を変えて計算してみましょう。
ロケットの内部構造
ロケットの内部には、ガスを発生させるための燃料と酸素が入っています。酸素を積まなければならない理由は、宇宙には酸素がないためです。一方ジェット機は、ロケットと同じ原理で飛びますが、酸素を積んでいません。そのためジェット機で宇宙へ行くことはできません。ロケット内部で発生したガスは、ロケット下方のノズルへ到達し、放出されます。
ロケットの速さ
ここまでは、ロケットが飛ぶしくみを説明してきました。それではロケットは、どのくらいの速度で飛べば宇宙に行けるのでしょうか。
まず、人工衛星が地上すれすれを落ちずに地球の周りを回り続けるのに必要な速度は約7.9km/sです。人工衛星を打ち上げるロケットは、打ち上げられて衛星を放出する前までにこの速度に到達していなければなりません。この約7.9km/sを第一宇宙速度とよびます。
地球の重力を振り切り、太陽の周りを回る人工衛星となる場合は、約11.2km/sの速度が必要となります。これを第二宇宙速度と呼びます。
太陽の重力も振り切り、太陽系外に到達するためには、約16.7km/sの速度が必要となります。これを第三宇宙速度と呼びます。
太陽の周りを回る人工衛星や、太陽系外を目指す人工衛星は、天体の引力を利用したスウィングバイという航法で速度を増すことができます。
最後に
宇宙ロケットは、技術こそ複雑で高度ですが、その原理は極めて単純で、ロケットのノズルから噴出されるガスの勢いの反動を用いて飛んでいます。
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。
【写真でわかる】太陽の構造
太陽は、みなさんにとってもっとも馴染の深い天体ではないでしょうか?それだけでなく、沢山の光を地球に供給するなど、私たちの生活に欠かせない重要な存在でもあります。今回は、そんな太陽について解説していきたいと思います。
太陽とは
太陽は、電離したガス(プラズマ)の塊です。また、地球に最も近い恒星でもあります。
直径 140万km(地球の109倍)
質量 2×1030 kg(地球の30万倍)
光度 3.8×1026 ワット
表面温度 6000K
太陽はどうやって光るのか
実は、太陽に限らず、全ての物体はその温度に応じて光を発しています。これを、黒体放射といいます。黒体放射は、温度が高ければ高いほど短い波長の電磁波を出すようになります。そして、太陽のように目に見える光(可視光)を発するには、1000K程度の温度でなければいけません。私たちも温度に応じて電磁波を発していますが、体温は約36℃(約300K)であるので、目に見える光を発することができません。
黒体放射についてもっと知りたい方は、こちらのサイトがおすすめです。
太陽の温度源
太陽の光は、6000Kという高温な太陽表面から発せられますが、太陽はなぜこんなにも高温なのでしょうか。それは、太陽内部で、核融合反応が起こっているからです。太陽だけでなく、恒星はすべて、核融合反応によって輝いています。
太陽はどうやって形を保つか
物体には重力がはたらくので、放っておいたらどんどん収縮していきます。太陽も、自身の重力により、常に内側に収縮しようする力がはたらいています。この収縮を止めているのが、ガスによる圧力です。空気でパンパンになったタイヤを押しつぶそうとしてもつぶれないのと原理は一緒です。
太陽の内部
太陽内部は、中心からコア、放射層、対流層となっています。コアの温度は1000万Kを超え、水素原子核がヘリウム原子核に変わる核融合反応が起きています。ここで作られたエネルギーは放射層→対流層→太陽表面へと運ばれていきます。
太陽の中心温度は、1400万Kに達しており、核融合反応が起こっています。中心部で生じたエネルギーは、太陽の放射層を数万~数十万年かけて通過します。対流層まで運ばれたエネルギーは数か月程度で対流層を通過し、太陽表面へ到達します。
太陽大気の構造
太陽大気は内側から順に、光球、彩層、コロナという名前がついています。
太陽の表面:光球
太陽はガスの塊なので、太陽と外部とを区別するはっきりとした境目はありません。そこで、太陽を可視光で観測したときに見える光の球を、太陽の表面としています。この太陽の表面を光球といいます。光球の表面温度は6000Kです。
太陽の表面には、黒点、白斑、粒状班といった模様があります。黒点は、周囲よりも暗い場所で、下の写真の黒い斑点です。温度も周囲より低く、4000K程度です。また、周囲より磁場が強いです。黒点が周囲より冷たいのは、周囲より磁場が強く、太陽内部からの熱輸送が妨げられるからだと考えられています。黒点の数は、太陽の活動と共に増えたり減ったりします。この数の増減には周期性があり、11年周期で数が増えたり減ったりを繰り返しています。
白斑は、黒点の周囲にできる明るい模様です。白斑も、黒点ほどではないですが、磁場があります。粒状班は、太陽表面のつぶつぶです。これは、太陽内部の対流が表面で沸き立っているものです。ちょうど沸騰した鍋の中の水の、沸き立つ泡のようなものです。
彩層
光球の外側には、温度が数千から一万Kの彩層と呼ばれる大気層があります。彩層を観察するには、太陽からのHα線をとらえる必要があります。
Hα線で見たとき、周囲より明るく白くなっている場所があります。これはプラージュといって、活発に活動する領域です。また、彩層ではフレアと呼ばれる大爆発も起こっています。これは、太陽表面の活動の中で最大規模を誇ります。
下の写真の巨大な筋のようなものは、プロミネンスです。プロミネンスは、太陽の縁では明るく見えますが、中央付近では、太陽表面より暗いため、黒い筋として見えます。これを、ダークフィラメントといいます。
コロナ
彩層の外にはコロナがあります。コロナの温度は100万Kもあります。コロナがなぜこんなにも熱いのかはわかっていません。これをコロナ加熱問題といいます。コロナの様子は、X線や皆既日食中に見ることができます。
太陽フレアとコロナ質量放出
太陽フレアが起こると、コロナの物質が外に放出されます。これを、コロナ質量放出、あるいはCMEと呼びます。コロナ質量放出が地球へ到達すると、地球磁気圏のバランスが崩れることがあります。これを磁気嵐と呼びます。磁気嵐が起こると、発電所や変電所の電気機器が壊れて停電が起こることがあります。また、CMEにより人工衛星が壊れることもあります。
太陽を見る眼
ここまで、太陽の構造を扱ってきました。それでは、これらの構造はどのようにして解明されるのでしょうか。実は、太陽の構造を知るには、太陽から発せられる電磁波を観測します。さらに、観測する電磁波の波長の違いによって、知ることができる構造が変わります。
可視光→光球(黒点、白斑、粒状班)
Hα線→彩層(プラージュ、フレア、プロミネンス)
X線→コロナ
まとめ
この記事の内容を復習できる問題を用意しました。
こちらのサイトでは、太陽の画像や動画を閲覧することができます。
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。
【天文学の理解に役立つ!】中学・高校数学超ざっくり解説&おすすめサイト一覧
天文学を深く楽しもうとした時、時には高度な数学の知識が必要となるかもしれません。この記事では、最低限の知識や、高校数学の理解に役立つサイトを紹介します。
三平方の定理
\[ a^2+b^2=c^2\]
指数・対数関数
指数関数は指数の関数
\[ y=a^x\]
対数関数は指数関数の逆
\[ y=log_ax\]
aがxになるためにはy乗すればいいんだよ!という式。
三角比・三角関数
サイン・コサイン・タンジェント
微分・積分
'がついたら微分する。
公式を覚えたらとりあえず計算できる。
\[ \begin{pmatrix}x\end{pmatrix}'=0\]
\[ \begin{pmatrix}x^2\end{pmatrix}'=2x\]
\[ \begin{pmatrix}x^3\end{pmatrix}'=3x^2\]
\[ \begin{pmatrix}x^4\end{pmatrix}'=4x^3\]
素晴らしきe。
\[ \begin{pmatrix}e^x\end{pmatrix}'=e^x\]
インテグラル∫が付いたら積分する。積分は微分の逆。積分定数Cは忘れずつけよう。
\[∫dx=x+C\]
\[∫xdx=\frac{1}{2}x^2+C\]
\[∫x^2dx=\frac{1}{3}x^3+C\]
\[∫x^3dx=\frac{1}{4}x^4+C\]
もちろん素晴らしきe
\[∫e^xdx=e^x+C\]
星の等級の求め方
みなさんは星の等級をご存じですか? 星の等級は、星の明るさを表していて、おおいぬ座のシリウスは-1.5等級、オリオン座のベテルギウスは0.42等級です。 この記事では、星の等級とはなにかを解説します。
等級とは
等級とは、星の明るさを表す単位です。具体的には、「-1.5等級」「0.42等級」のように表します。このとき、数字が小さいほど明るい星であることを表しています。
みかけの等級
みかけの等級は、地球から見たときの星の明るさを表します。
絶対等級
絶対等級は、星を地球から10pc離れた場所に置いたときの星の明るさを表します。
みかけの等級の求め方
星のみかけの明るさは等級を使って表すことができます。等級は明るさが100倍違うと5等違うように設定されています。
星AとBからの輻射流速(届く光の強さ)をそれぞれFAとFBとすると、星のみかけの等級mAとmBの差は次のようになります。
\[ m_A-m_B=-2.5log\begin{pmatrix}\frac{F_A}{F_B}\end{pmatrix} \tag{1}\]
実際に星の等級を求めるときは、明るさの基準となる標準星が用いられます。標準星の一つとして、こと座のベガがあります。こと座のベガは0等級です。標準星を使うと、等級は次のように求めることができます。
絶対等級の求め方
天体を10pcの距離においたときの明るさを絶対等級Mと定義すると、みかけの等級mとは次の関係があります。
\[ M=m-5log\begin{pmatrix}\frac{d}{10}\end{pmatrix} \tag{2}\]
ここで、dはpc単位で測った天体までの距離である。
シリウスの絶対等級を求める
上の定義式を使って、シリウスの絶対等級を求めてみましょう。みかけの等級は-1.5等級、地球からの距離は2.6pcです。(有効数字は2桁ですので、答えは0.21、0.0023のように位を示す0を除いた2桁で書きましょう。計算するときは、有効数字2+1桁で計算するとよいです。)
\[ M=-1.46-5log\begin{pmatrix}\frac{2.6}{10}\end{pmatrix} \]\[ =-1.46-5×\begin{pmatrix}-0.585\end{pmatrix} \]\[ =-1.46+2.93 \]
\[ =1.47 \]\[ ≒1.5 \]logの計算は、PCなどでlog3などと入力してみましょう。答えが出てきます。
ベテルギウスの絶対等級を求める
続いてベテルギウスの絶対等級も出してみましょう。ベテルギウスのみかけの等級は0.42等級、距離は168pcです。
\[ M=0.42-5log\begin{pmatrix}\frac{168}{10}\end{pmatrix} \]\[ =0.42-5×\begin{pmatrix}1.23\end{pmatrix} \]\[ =0.42-6.15 \]
\[ =-5.73 \]\[ ≒-5.7 \]シリウスのみかけの等級は-1.5等級、ベテルギウスのみかけの等級は0.42等級で、みかけはシリウスの方が明るいですが、絶対等級はシリウスは1.5等級、ベテルギウスは-5.7等級で、ベテルギウスの方が明るいことが分かります。
最後に
等級についてもっと学んでみたい方は以下の記事をおすすめします。
いかがでしたでしょうか?この記事がお役に立てれば幸いです。
【イラストでわかる】ブラックホール降着円盤
みなさんはブラックホールの降着円盤という言葉を聞いたことがありますか?ブラックホールは、入ったら二度と出てこれない穴として有名ですが、その周囲には大量のガスが渦巻いています。この記事では、ブラックホールを取り巻く降着円盤について解説します。
ブラックホール降着円盤
ブラックホール降着円盤(こうちゃくえんばん)とは、ブラックホールのまわりに存在するガスでできた円盤のことです。
なぜできるのか?
ブラックホールの周囲にガスが存在していると、そのガスはブラックホールに引き寄せられて落ちてきます。このとき、ガスはまっすぐ落ちてくるのではなくて、ブラックホールの周りを回りながら落ちてくる場合がほとんどです。みなさんも、お風呂や洗面所にためた水を抜くと、水がくるくる回りながら吸い込まれていくのを見たことがあると思いますが、それと同じ原理です。この回転しながら落ちていくガスが大量にあることで、ブラックホールの周りに円盤を作ります。これがブラックホール降着円盤です。
ガスが回転しないときもあるのでは?
ガスが回転せずに落ちていくときもあります。この場合は、ブラックホール降着流(こうちゃくりゅう)と呼ばれることもあります。
降着円盤は光る
回転速度の違いが摩擦を作り出す
降着円盤の回転速度は、内側ほど速くなります。これは、内側の方がブラックホールに近く、重力が大きくなるからです。このことから、ブラックホールの外側と内側では回転速度に差が生じることになります。すると、外側と内側のガスの間に摩擦が生じます。
摩擦が光を作り出す
摩擦があると、摩擦熱が発生します。みなさんも手のひらを激しくこすり合わせてみてください。手のひらが熱くなると思います。降着円盤で発生した摩擦熱は、その一部が光に変わります。
エネルギーの流れ
降着円盤から光が発せられるしくみは、エネルギーの流れという観点から見ることができます。まず、ブラックホールの周囲のガスは、重力によって運動し始めます。運動する物体は、運動エネルギーを持っています。ここで、重力エネルギーが運動エネルギーに変わったといえます。運動するガスは、途中で摩擦により運動エネルギーの一部を失い、減速します。このとき、失った分のエネルギーは熱エネルギーに変わります。更にそれが光エネルギーに変わることになります。
ブラックホールが速く自転するほど光が強い
降着円盤から放出される光は、ブラックホール自身が速く回転するほど多くなると考えられています。自転しないシュバルツシルト・ブラックホールでは、質量エネルギーの10%が放出されますが、高速で自転するカー・ブラックホールは、質量エネルギーの40%を放出します。この40%というのは、宇宙でも一番のエネルギー変換効率を誇ります。
降着円盤の種類
降着円盤には、大きく分けて3つの種類があります。これらは、質量降着率の違いによって区別されます。ここで質量降着率とは、ある決まった時間の中で、ブラックホールに吸い込まれる質量はどれくらいかということです。大雑把には、降着円盤にどのくらい質量が取り込まれるかということです。
標準円盤
標準円盤は、その名のとおり標準的な降着円盤のモデルです。標準円盤は、重力エネルギーから光エネルギーへの変換効率が最もよいです。先ほどの10%や40%というのは、標準円盤での値になります。光エネルギーの放出により、円盤内部のエネルギーは減るので、円盤は薄くなります。また、温度も低くなります。
ライアフ
標準円盤より質量降着率が低いとライアフになります。放射非効率降着流(ほうしゃひこうりつこうちゃくりゅう)とも言います。円盤内へ入ってくる質量が少ないため、円盤のガス密度は下がります。また、放射するエネルギーも少ないため、円盤は厚くなります。
スリム円盤
標準円盤より質量降着率が高いとスリム円盤になります。スリム円盤は、大量の質量が供給されるため、円盤のガス密度が高くなります。そのため、降着円盤内のガスにぶつかり、光子が逃げられないままブラックホールへ落ちていくという事態が発生します。これを、光子捕獲(こうしほかく)といいます。
まとめ
最後に、降着円盤の特徴についてまとめておきます。
ブラックホールそのものについて知りたい方は以下の記事をお読みください。
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。
【最新の話題】水素とヘリウムだらけの大気の惑星に生命が存在できるかも!?
みなさんは地球外生命体はいると思いますか?いるとしたらどんなところにいるでしょうか。スイスにあるベルン大学物理学研究所のマリット・モル・ルースさんたちは、水素やヘリウムが大気の大部分を占めるような岩石惑星でも長期間水が存在できる可能性があると主張しました。この記事では、ルースさんたちの考えをわかりやすく解説していきます。
- 生命の存在条件
- 宇宙ではどのような岩石惑星が「普通」か
- 水素とヘリウムの大気の岩石惑星で液体の水が存在できるか
- 水素とヘリウムの大気の岩石惑星で液体の水が長期間存在できるには
- 高圧力、水素とヘリウム大気の惑星での生命
- 課題
- まとめ
- 解説記事と原論文
生命の存在条件
生命の存在条件としては、次の3つが重要です。
①エネルギーが手に入るか
➁栄養が手に入るか
③液体の水が存在するか
今回の主人公
この記事では、主に③の液体の水が存在できるかについて考えます。また、研究対象は、地球に似た岩石惑星です。これは、スーパーアースと呼ばれています。ただし、大気中の成分は、地球のような窒素や酸素が多いものではなく、水素とヘリウムが大部分を占めています。
宇宙ではどのような岩石惑星が「普通」か
私たちの地球では、空気の大部分は窒素と酸素が占めています。ですが、地球以外ではそのような星は多くありません。宇宙では、水素とヘリウムが大部分を占める空気を持つ惑星の方が普通です。なぜならば、水素とヘリウムは宇宙で最もたくさんあるからです。そのため、惑星を形成する過程で、大量の水素HとヘリウムHeを取り込むことができるのです。
ですが、このような「普通」の岩石惑星に生命が存在できるかどうかはわかっていません。逆に、もしこのような惑星に生命が存在できるのであれば、地球外生命はずっと探しやすくなります。
水素とヘリウムの大気の岩石惑星で液体の水が存在できるか
水素とヘリウムが大気の大部分を占める岩石惑星では、水は存在できるのでしょうか。
必要なのは適度な温度
液体の水が存在するためには、惑星の地表面が温暖である必要があります。なぜなら水は、冷たすぎると凍ってしまい、暑すぎると蒸発してしまうからです。
地球を暖めているのはCO2
地球を温めているのはCO2です。しかしながら、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星では、CO2による温室効果は十分ではありません。
H2の温室効果
CO2の代わりに惑星を温めるのは、H2です。H2は圧力が高い環境では、温室効果ガスになります。つまり、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星では、圧力さえ高ければ、惑星を温めることができます。
水素とヘリウムの大気の岩石惑星で液体の水が長期間存在できるには
ここまでで、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星で、液体の水が存在できることがわかりました。しかし、液体の水が長期間存在できるかどうかはわかりません。ルースさんたちの研究は、この問題に対するものです。
ルースさんたちの研究の結果、地球の大気圧の100倍から1000倍という条件では、80億年もの間、液体の水が存在できるような温暖な環境が保持できるということがわかりました。
ルースさんたちの研究
ルースさんたちの行った研究を見てみましょう。下のリンクは、論文の図1のリンクです。
ページ内の図は4つあると思います。まずは一番左上を見てみましょう。このグラフは、横軸が恒星とそれに付随する惑星の距離です。単位は天文単位(AU)です。地球と太陽の距離は1AUです。グラフの縦軸は、エンベロープ質量です。これは、惑星を包む大気の質量です。グラフには、丸い点が大量にあると思います。この点は液体の水が存在できることを示します。特に黄色い点は、液体の水が50億年以上存続できます。
丸い点は、恒星からの距離が近い惑星ではエンベロープ質量が少ないところにあり、恒星からの距離が遠い惑星ではエンベロープ質量が多いところにあります。このことから、恒星からの距離が遠い場所では、液体の水を存続させるためによりたくさんのエンベロープ質量が必要になるということがわかります。
高圧力、水素とヘリウム大気の惑星での生命
水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星では、高圧力であれば液体の水が存在できることがわかりました。では、このような星では、生命は存在できるのでしょうか。
高圧力の問題
地球では、高圧力下でも生命が存在することが確認されています。具体的には、地上の気圧の500倍までなら生命が存在します。そのため、100倍から1000倍の圧力という条件では、生命は存在する可能性があります。
課題
この研究で、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星に液体の水が存在できることはわかりました。ですが、そもそも水が発生するかはわかりません。このような環境で水がどれくらいの確率で発生するかは研究される必要があります。
まとめ
ルースさんたちの研究では、地球にあまり似ていない惑星にも生命が存在するかもしれないことがわかりました。それは、大気圧が高圧であり、大気中の主成分が水素やヘリウムの岩石惑星です。地球外生命は、地球そっくりな惑星だけでなく、あまり似ていない惑星でも生きているかもしれません。
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。
解説記事と原論文
解説記事
原論文
【天文学を知ろう】天文学のWebサイト紹介
この記事では、天文学関連のWebサイトを紹介します。天文学に関する幅広い知識が得られるサイトを集めてみたのでよかったら見てみてください。
おすすめWebサイト
国内研究機関
国立天文台
天文学に関するニュースやコンテンツが盛りだくさんのサイトです。すばる望遠鏡のペーパークラフトも配布しています。
日本天文学会
日本天文学会で何が行われているかを垣間見ることができます。
JAXA
宇宙開発に関する情報を得たい方はこちらから。
情報サイト
Nature Astronomy
国際的学術雑誌「Nature」に掲載された論文の中で、天文学に関する話題を集めたサイトです。最新の天文学の情報を得ることができます。
アストロアーツ
星に関する情報を集めたサイトです。天体写真を見ることもできます。天体観測が好きな方はぜひ。
sorae
soraeは、天文学や宇宙開発についての情報を集めたサイトです。情報が豊富でわかりやすいので、天文学に興味のある方全員におすすめできます。
天文学辞典
天文学辞典は、日本天文学会が監修する本格的な用語辞典です。天文学に関する用語で分からないものがあったら訪れてみましょう。
太陽の科学館
太陽の科学館では、太陽について基本的なものから大学専門レベルの深い知識までを得ることができます。
月探査情報ステーション
月探査情報ステーションは、月や月探査、惑星探査に関する情報を集めたサイトです。月占いなど、気軽に楽しめるコンテンツもあるので、月が好きな方におすすめのサイトです。
宇宙ヤバイchデータベース
宇宙の話題を楽しく紹介しています。宇宙ヤバイchというYouTubeチャンネルもあるようです。
国外研究機関・企業
NASA
NASAは、アメリカの宇宙開発機関です。このサイトでは、アメリカの宇宙開発に関する情報が得られます。宇宙に関する写真も豊富です。
SDO
SDO(ソーラー・ダイナミクス・オブザバートリー)はNASAが打ち上げた太陽の観測衛星です。このサイトでは、太陽に関する画像をたくさん見ることができます。
ESO
ESOは、ヨーロッパの天文台です。天文学に関する情報や、美しい天文写真が豊富です。
最後に
いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。