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【最新の話題】水素とヘリウムだらけの大気の惑星に生命が存在できるかも!?

スーパーアースGJ1214bのイメージ画像     credti: ESO/L. Calçada

みなさんは地球外生命体はいると思いますか?いるとしたらどんなところにいるでしょうか。スイスにあるベルン大学物理学研究所のマリット・モル・ルースさんたちは、水素やヘリウムが大気の大部分を占めるような岩石惑星でも長期間水が存在できる可能性があると主張しました。この記事では、ルースさんたちの考えをわかりやすく解説していきます。

 

 

 

生命の存在条件

生命の存在条件としては、次の3つが重要です。

①エネルギーが手に入るか

➁栄養が手に入るか

③液体の水が存在するか

生命に必要なもの

今回の主人公

この記事では、主に③の液体の水が存在できるかについて考えます。また、研究対象は、地球に似た岩石惑星です。これは、スーパーアースと呼ばれています。ただし、大気中の成分は、地球のような窒素や酸素が多いものではなく、水素とヘリウムが大部分を占めています。

今回の主人公

 

宇宙ではどのような岩石惑星が「普通」か

私たちの地球では、空気の大部分は窒素と酸素が占めています。ですが、地球以外ではそのような星は多くありません。宇宙では、水素とヘリウムが大部分を占める空気を持つ惑星の方が普通です。なぜならば、水素とヘリウムは宇宙で最もたくさんあるからです。そのため、惑星を形成する過程で、大量の水素HとヘリウムHeを取り込むことができるのです。

ですが、このような「普通」の岩石惑星に生命が存在できるかどうかはわかっていません。逆に、もしこのような惑星に生命が存在できるのであれば、地球外生命はずっと探しやすくなります。

どっちが「普通」?

 

水素とヘリウムの大気の岩石惑星で液体の水が存在できるか

水素とヘリウムが大気の大部分を占める岩石惑星では、水は存在できるのでしょうか。

必要なのは適度な温度

液体の水が存在するためには、惑星の地表面が温暖である必要があります。なぜなら水は、冷たすぎると凍ってしまい、暑すぎると蒸発してしまうからです。

地球を暖めているのはCO2

地球を温めているのはCO2です。しかしながら、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星では、CO2による温室効果は十分ではありません。

H2温室効果

CO2の代わりに惑星を温めるのは、H2です。H2は圧力が高い環境では、温室効果ガスになります。つまり、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星では、圧力さえ高ければ、惑星を温めることができます。

気圧と水素分子の温室効果の強さの関係

 

 

水素とヘリウムの大気の岩石惑星で液体の水が長期間存在できるには

ここまでで、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星で、液体の水が存在できることがわかりました。しかし、液体の水が長期間存在できるかどうかはわかりません。ルースさんたちの研究は、この問題に対するものです。

 

ルースさんたちの研究の結果、地球の大気圧の100倍から1000倍という条件では、80億年もの間、液体の水が存在できるような温暖な環境が保持できるということがわかりました。

ルースさんたちの研究

ルースさんたちの行った研究を見てみましょう。下のリンクは、論文の図1のリンクです。

www.nature.com

ページ内の図は4つあると思います。まずは一番左上を見てみましょう。このグラフは、横軸が恒星とそれに付随する惑星の距離です。単位は天文単位AU)です。地球と太陽の距離は1AUです。グラフの縦軸は、エンベロープ質量です。これは、惑星を包む大気の質量です。グラフには、丸い点が大量にあると思います。この点は液体の水が存在できることを示します。特に黄色い点は、液体の水が50億年以上存続できます。

エンベロープ質量

丸い点は、恒星からの距離が近い惑星ではエンベロープ質量が少ないところにあり、恒星からの距離が遠い惑星ではエンベロープ質量が多いところにあります。このことから、恒星からの距離が遠い場所では、液体の水を存続させるためによりたくさんのエンベロープ質量が必要になるということがわかります。

恒星からの距離と惑星の大気の量

 

 

高圧力、水素とヘリウム大気の惑星での生命

水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星では、高圧力であれば液体の水が存在できることがわかりました。では、このような星では、生命は存在できるのでしょうか。

高圧力の問題

地球では、高圧力下でも生命が存在することが確認されています。具体的には、地上の気圧の500倍までなら生命が存在します。そのため、100倍から1000倍の圧力という条件では、生命は存在する可能性があります。

 

 

課題

この研究で、水素やヘリウムが大気の大部分を占める惑星に液体の水が存在できることはわかりました。ですが、そもそも水が発生するかはわかりません。このような環境で水がどれくらいの確率で発生するかは研究される必要があります。

 

 

まとめ

ルースさんたちの研究では、地球にあまり似ていない惑星にも生命が存在するかもしれないことがわかりました。それは、大気圧が高圧であり、大気中の主成分が水素やヘリウムの岩石惑星です。地球外生命は、地球そっくりな惑星だけでなく、あまり似ていない惑星でも生きているかもしれません。

 

いかがでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。

 

 

解説記事と原論文

解説記事

www.natureasia.com

原論文

www.nature.com