【イラストでわかる】チャンドラセカール質量
みなさんはチャンドラセカール質量はご存じですか?チャンドラセカール質量は白色矮星の上限質量としてよく知られています。この記事では、チャンドラセカール質量について解説します。
目次
チャンドラセカール質量とは
チャンドラセカール質量は、白色矮星の上限質量としてよく知られています。
よりくわしく述べると、チャンドラセカール質量は、絶対零度(-273℃)の電子の縮退圧によって支えられている星の上限質量です。電子の縮退圧により支えられている星とは、例えば白色矮星です。
チャンドラセカール質量の理解において、電子の縮退圧は重要なキーワードになります。そこで、これから先は電子の縮退圧について解説します。長いですがお付き合いください。
縮退圧
縮退圧とは、星の重力による収縮を防ぐ力です。縮退圧を生み出すのは、フェルミ粒子と呼ばれる粒子です。この世はさまざまな物質で構成されていますが、これをバラバラにしていくと素粒子と呼ばれる粒になります。
ボース粒子とフェルミ粒子
素粒子は、ボース粒子とフェルミ粒子の二つに分けられます。このうちボーズ粒子は、同じ場所に同じエネルギーの粒子が何個でも存在することができます。
一方、フェルミ粒子は、同じ場所に同じエネルギーの粒子が2つより多く存在することができません。(スピン1/2の場合)これをパウリの排他律といいます。
ボース粒子とフェルミ粒子についてはこちらの記事で詳しく解説されています。
フェルミ縮退
フェルミ粒子の特性は、フェルミ縮退と呼ばれる現象を引き起します。これは、通常より粒子が高いエネルギーを持ってしまう現象です。通常は、粒子のエネルギーは温度に依存します。しかし、高密度の環境下では、低いエネルギーを持てる粒子の数が少なくなります。粒子は、通常、できるだけ低いエネルギーでいようとするのですが、高密度下ではそうもいかないのです。従って、低いエネルギーを持てなかった粒子は高いエネルギーを持たざるを得ないのです。ちなみに、フェルミ縮退によって通常より高くなった分のエネルギーのことをフェルミエネルギーといいます。
超高密度の環境下では、フェルミ粒子がもつ運動量が飛躍的に大きくなり、縮退圧がとてつもなく大きくなります。その結果、巨大な質量をもつ星を支えることができるようになります。
電子の縮退圧
素粒子の標準模型によれば、電子はフェルミ粒子です。つまり、電子を含む高密度の星ではフェルミ縮退が起こることになります。電子の縮退圧とは、電子がフェルミ縮退によって得るエネルギーによる圧力ということになります。
白色矮星
白色矮星は、太陽と同じくらいの質量をもちながら、半径は100分の1ほどです。しかも、核融合反応が起きないため、核エネルギーによって星を支えることができません。それにもかかわらずつぶれてブラックホールにならないのは、縮退圧のおかげなのです。
縮退圧が支える質量
フェルミ縮退による縮退圧は、星の重力による収縮を防ぎます。ですが、これにも限界があります。これがチャンドラセカール質量です。チャンドラセカール質量は太陽の質量の約1.4倍です。
限界質量を超えるとどうなるのか
チャンドラセカール質量を超えると、重力が縮退圧を勝り、重力崩壊を始めます。その後の命運は星によって異なります。
白色矮星では、チャンドラセカール質量を超えると、超新星爆発が起こります。
最後に
下の記事は、チャンドラセカール質量について数式を交えてわかりやすく解説しています。具体的な計算を知りたいという方はどうぞ。
いかかでしたか?この記事がお役に立てたら幸いです。